確かに、俺らのこの学年(1975年度、東京藝術大学油画科入学)は、他の学年の連中より特別だった。現役生が数名で、多浪の学生が多かった。そのため入学当時から個々の表現、制作スタイルの違いでグループが出来て行った。
芸大調の具象画を描くもの、古典技法を習得し、油画本来の立ち位置を模索するもの、壁画や版画の技術習得に明け暮れるもの、現代美術というジャンルに手をつけるものなど、様々な学生がいた。学年が上がるにつけ、ますます個人の制作スタイルの違いで、相互の交流は、なかった。ただ表現ジャンルが違うからといって、決してそれぞれを嫌っていたわけではなく、単純に会話する機会が、なかっただけだった。
共通認識として一部の教官を除いて、俺らは、芸大に対して、そして他の堕落した教官に対して、おもいっきり落胆していたし、反発もしていた。
ただ後年、自分が実際にこの芸大の教官になって、大学の組織の中で働いた時「ああ、こうやってアーティストは、堕落していくんだ」と身に染みて感じた。なので早々に撤退した。
そして、海外での展覧会やプロジェクトに明け暮れしていたある日、同期生だった佐川から来たこの展覧会の開催メッセージに泣けた。
芸大を卒業して半世紀経た現在、どのような時間を使って自分の今があり、これからの残りの人生を、どのように計画していくか同じ大学の学科で、同じ時間を共有していた同胞と会い、改めて考えることも悪くないなと思った。
クソみたいな美術愛好家や、矮小コレクター、芸大讃美の連中なんて、この展覧会に観に来なくていいから、俺らだけで一度、集まろうぜ!
1975年度、東京芸大油画科入学生
美術家 川俣 正
